「退職届って手書きの方がいいの?」「書き方を間違えたら失礼にならない?」そんな不安を抱えている方は多いと思います。私も子育てと仕事を両立する中で退職を決意したとき、まず悩んだのが退職届の準備でした。調べれば形式はたくさん出てきますが、実際に自分で書こうとすると迷うものです。
この記事では、私の体験談を交えながら手書きの退職届を正しく書くポイントと注意点をまとめました。同じように退職を考えている方が安心して手続きを進められるよう、具体的な手順を丁寧に紹介していきます。
退職届と退職願の違いを知っておこう
退職を伝える文書には「退職届」と「退職願」があります。どちらも似た言葉ですが、役割や提出のタイミングが大きく異なるため、混同しないように注意が必要です。私自身も最初は違いをよく理解しておらず、調べながら準備を進めました。ここでは両者の違いを、体験談を交えて詳しく解説します。
退職願とは?
退職願は「退職したい」という意思を会社に伝えるための文書です。言い換えれば「お願い」であり、提出した段階ではまだ効力はありません。会社が承認して初めて退職が成立するため、交渉や話し合いの余地があります。
私の場合も、最初に提出したのは退職願でした。正直に言うと「これを出したらもう辞めることが確定する」と思っていたので、上司に「一度考え直しては?」と声をかけられたときは戸惑いました。でも、退職願はあくまで意思表示であり、状況によっては撤回も可能だと知って安心したのを覚えています。夫とも「まずは退職願で様子を見てからにしよう」と相談し、家庭の予定も含めて調整しました。
退職届とは?
退職届は、退職が決定した後に提出する正式な文書です。会社側の承認を経て提出するため、効力は非常に強く、提出したら基本的に撤回はできません。つまり「最終確認」の意味を持つものです。
私が退職届を書くとき、夫から「これを出したらもう後戻りできないよね」と言われ、家族としての覚悟も共有しました。子どもにも「ママのお仕事が変わるんだよ」と伝え、家庭全体で新しい生活への準備を進めていきました。
2つの違いを整理すると
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退職願:退職したいという意思表示(会社が承認するまでは撤回可能)
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退職届:退職が決まった後に提出する正式文書(撤回は原則できない)
手書きの退職届を選ぶメリット
最近はパソコンで作成する人も増えています。便利さや見やすさを考えると確かに合理的ですが、あえて「手書き」を選ぶことで伝わる誠意や家庭的なぬくもりがあります。ここでは、私が感じた手書き退職届の良さを掘り下げて紹介します。
誠意が伝わる
手書きの文章は、書いた人の人柄や心のこもり具合がそのままにじみ出ます。字の上手下手は関係なく、「自分の手で一文字ずつ丁寧に書いた」という事実自体が誠意を表すのです。
私自身、上司に提出した際に「字がきれいじゃなくても、手書きで書いてくれて嬉しい」と言われ、形式的なもの以上の気持ちが伝わったのを実感しました。職場によっては「パソコンで打ってもいい」と言われることもありますが、長く勤めた会社やお世話になった上司へ感謝を伝えるには、やはり手書きの方がふさわしいと感じました。
また、書いている時間そのものが気持ちの整理につながります。私も一文字ずつ書くたびに「この会社で学んだこと」「一緒に働いた人たち」を思い出し、自然と感謝の気持ちが湧いてきました。
家庭での安心感
退職届を書く作業は、家庭にとっても新しい生活への節目になります。私が手書きで準備していたとき、子どもが「ママ、それ何書いてるの?」と聞いてきました。「新しい一歩の準備だよ」と伝えると、子どもなりに理解してくれたようで、「がんばってね」と応援してくれたのが心に残っています。
夫も「急いで打ち込むより、手で書いたほうが落ち着けるよね」と言ってくれて、書き終えるまでそっと見守ってくれました。家庭の中で退職届を書く姿を見せることは、家族にとっても「これから生活が変わるんだ」という共有の時間になります。
手書き退職届の正しい書き方
ここでは、退職届を手書きで準備するときに迷いやすいポイントを、私の実体験を交えながら丁寧に整理します。便箋やペン選びから、文面の配置、封筒の書き方まで一度に確認できるようにまとめました。
用紙の選び方
基本は 白無地・罫線なしが鉄則。A4またはB5の白い無地用紙を使い、柄入りや色紙は避けます。コピー用紙でも書けますが、にじみや透けを防ぐために、やや厚め(コピー用紙なら坪量64g/㎡以上、便箋なら上質紙)だと安心です。
縦書き・横書きはどちらでも構いませんが、社内の様式や過去の例に合わせるのが無難。私は社内文書が縦書き中心だったので縦書きを選びました。
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余白の目安:上下20〜25mm、左右15〜20mm程度を確保。文字が端に詰まると読みづらくなります。
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下敷き・罫線ガイド:透明の罫線シートを用紙の下に敷くとまっすぐ書けます(用紙自体に罫線は入れない)。
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予備の用紙:誤字に備えて2〜3枚は予備を用意。私は下書き→清書の2段構えにしました。
筆記具の選び方
黒インク一択。水性ゲルや油性ボールペン、万年筆が使いやすいです。消せるペン・鉛筆・スタンプ式のシャチハタは不可。長期保存や改ざん防止の観点から、耐水性・耐光性のある顔料インクならさらに安心です。
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太さの目安:0.5mm前後がバランスよく読みやすい。
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にじみ対策:同じ用紙に試し書きをして、乾きやすさを確認。万年筆なら吸い取り紙を添えると汚れ防止に。
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書きやすさ:長文でも手が疲れにくいペンを本番用に。私は練習はゲルインク、本番は滑りすぎない万年筆にしました。
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文字のトーン:丸文字や装飾は控えめに。ゆっくり大きめに、漢字は略字を避けて楷書で。
書く内容の基本構成
構成はシンプルでOK。迷ったら、次の順番に沿って書けば整います。
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表題(タイトル)
紙の最上部中央に「退職届」。一回り大きめの字で。 -
本文
「私こと、このたび一身上の都合により、令和◯年◯月◯日をもちまして退職いたします。」
必要なら「在職中のご厚情に深く御礼申し上げます。」など一文を添えても◎。理由の詳細や不満は書かない。 -
日付
提出日を和暦または西暦で。社内の表記に合わせ統一します。 -
宛名
会社名+代表者名+敬称(例:株式会社○○ 代表取締役社長 山田太郎 殿)。部署宛なら「○○部 御中」。個人名に「御中」は使わない。 -
署名・捺印
所属・氏名を自署し、朱肉の認印で押印。シャチハタは避ける。
ここでつまずきやすいのが、退職日(いつ辞めるか)と提出日(いつ出すか)は別物という点。本文に書くのは「退職日」、末尾に記すのは「提出日」。就業規則の「〇日前までに申し出ること」に合わせて、上司と合意した退職日を本文に明記します。
縦書きレイアウトの置き方(目安)
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1行目中央:退職届
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2〜4行目:本文
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空行1行
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右寄せで提出日
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さらに下に右寄せで宛名(会社名→役職→氏名→殿)
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左寄せ(またはやや左)で所属・氏名・捺印
横書きレイアウトの置き方(目安)
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1行目中央:退職届
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2行目以降:本文
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末尾右寄せ:提出日/宛名
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右下:所属・氏名・捺印
文例(そのまま清書できる短文)
私こと、このたび一身上の都合により、令和◯年◯月◯日をもちまして退職いたします。
在職中は格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
封筒と折り方・提出マナー
提出が手渡しか郵送かでマナーが少し変わります。
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封筒:白無地・郵便枠なし・二重封筒が丁寧。A4三つ折りなら長形3号、B5三つ折りなら長形4号が目安。表中央に「退職届」、裏面左下に所属・氏名を書くのが一般的。手渡しの場合は宛名や郵便表示は不要、郵送時は会社宛名+「人事部 御中」や「代表取締役社長 様」に。
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折り方:用紙を三つ折り(下→上→上)にして、表紙が上を向くように。角を揃え、折り目は軽く。
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封:のり付けし、封じ目に「〆」。郵送なら赤字で「親展」を左下に。
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同封物:写真や個人的メモは同封しない。退職届のみ。
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提出の姿勢:アポを取り、封筒から取り出して本文を相手に向けて手渡し。「こちら、退職届でございます。ご査収ください」と一言添えると落ち着きます。
押印まわりの注意
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認印(朱肉)を使用。印影が薄いと読みづらいので、下敷きを敷いて真上から押す。
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苗字のみ・フルネームいずれでも可ですが、社内の慣例に合わせます。
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会社によっては押印不要のケースもあるので、就業規則や総務に確認。迷ったら捺印しておくと無難です。私は念のため持参し、求められたタイミングで押しました。
手書きで注意すべきポイント
間違いやすいところを先に押さえておくと、清書はぐっと楽になります。私が実際に準備して感じた結論は、間違えたら迷わず新しい用紙に書き直すこと。これだけで仕上がりの印象が見違えます。ここからは、具体的な注意点を順番に整理します。
修正はNG
修正液・修正テープ・二重線での訂正は避けます。にじみや段差が残って読みにくくなるだけでなく、正式文書としての体裁を損ねがち。
私も清書で漢字を一字書き違えてしまい、夫に「もう一枚書き直した方が気持ちいいよ」と背中を押されて書き直しました。結果、余白や行間まで整ったので、むしろ最初より良い仕上がりに。
汚れ防止には、下敷きと吸い取り紙(ティッシュでも可)を用意。インクが乾く前に触れてしまう“手の側面こすれ”にも注意して、文字を書いたら一呼吸おきます。
退職理由はシンプルに
本文には「一身上の都合により」と簡潔に。家庭の事情や職場の課題など詳細は書かないのがマナーです。
私は「子育てとの両立が難しいから」と書き足したくなりましたが、正式文書は個別事情を背負わせないのがきれい。どうしても気持ちを添えるなら、「在職中のご厚情に深く御礼申し上げます。」の一文で十分伝わります。
提出のタイミング
就業規則に定められた「〇日前まで」をまず確認。引き継ぎ・有休消化・保育園や学期の切れ目など家庭の予定も逆算し、1〜2か月前を目安に上司へ相談→合意→退職届の順で進めるとスムーズです。
私は保育園の年度替わりに合わせてスケジュールを組み、引き継ぎリストを早めに作ったことで、残り期間を落ち着いて過ごせました。
日付・表記の統一
和暦/西暦は社内表記に合わせて統一。縦書きなら日付や数字は漢数字「一二三」、横書きなら算用数字でも自然です。退職日(本文)は「会社と合意した最終日」、提出日(末尾の日付)は「実際に出す日」。混同しやすいのでメモで確認してから清書します。
宛名と敬称のミスに注意
宛名は「会社名+役職+氏名+殿」。部署宛てなら「御中」を使い、個人名に「御中」は付けません(二重敬称も避ける)。代表者名は最新か要確認。社名の表記(株式会社の位置)も公式に合わせます。私は提出前に会社サイトと名刺で最終チェックしました。
退職日と最終出社日の違い
「最終出社日=退職日」とは限りません。有休消化や特別休暇を取得すると、出社最終日から退職日までブランクができます。社会保険や住民税の手続き日に影響するため、人事と日付の整合を取ってから本文へ記載しました。必要に応じて「最終出社日は別途ご連絡いたします」と口頭で添えると誤解が防げます。
提出方法と控えの残し方
基本は上司へ手渡し。アポイントを取り、封筒から取り出して本文を相手向きにして差し出すのが丁寧です。郵送なら白無地封筒に「親展」、追跡が残る簡易書留が安心。
控えはスマホでスキャンまたはコピーを1部。受領日と相手の名前をメモしておくと、引き継ぎ計画の共有にも役立ちます。
個人情報の書き過ぎに注意
住所や電話番号は不要が一般的(社内で識別できるため)。所属・氏名のみで十分です。社員番号の記載がルール化されている会社だけ追記。机上に放置せず、子どもが触れない場所で保管して当日持参しました。
仕上げのチェックリスト
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用紙は白無地(A4/B5)、汚れや折れなし
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黒インクで楷書、略字・機種依存文字は使わない
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表題は中央「退職届」、本文は簡潔、誤字なし
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退職日と提出日を確認(和暦/西暦を統一)
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宛名・敬称・社名表記を公式に合わせる
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所属・氏名を自署し、朱肉の認印で捺印
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封筒は白無地、手渡しなら表に「退職届」、郵送なら宛名+「親展」
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家庭での体験談|退職届を準備した日々
退職届を書く時間は、私にとってただの事務作業ではありませんでした。家族と一緒に過ごしながら準備したその日々は、これから始まる生活を意識する大切な時間になりました。
子どもは私が机に向かって便箋に向き合っている姿を見て、「ママ、学校の宿題みたいだね」と笑いながら隣でお絵描きを始めました。普段の宿題の時間とは違い、真剣に文字を書いている私を見て、少し大人びた目線で覗き込んでくる姿が微笑ましくて。退職届を清書する手元と、カラフルに描かれる子どもの絵が同じ机の上に並んだ光景は、今でも忘れられません。
夫も「字がきれいに見えるように、ゆっくり大きめに書いたら?」とアドバイスをくれました。普段はせっかちな私にとって「ゆっくり書く」というのは意識しないと難しいこと。でもその言葉のおかげで、焦る気持ちが落ち着き、最後まで丁寧に書き切ることができました。実際に完成した退職届を夫に見せたとき、「これならきっと誠意が伝わるよ」と言ってくれたのが心強かったです。
また、家族の前で退職届を書くこと自体が、「これからは生活が変わるんだ」というメッセージになったように思います。私自身も、ペンを動かす一文字ごとにこれまでの職場での出来事を思い出し、自然と感謝の気持ちがあふれてきました。家族も「これからもっと一緒に過ごせるね」と未来を楽しみにしてくれて、退職を前向きに捉えられるようになりました。
まとめ|落ち着いて準備して新しい一歩を踏み出そう
退職届は一度きりの大切な文書です。手書きにすることで誠意が伝わり、会社との関係を円満に終える助けになります。内容はシンプルに、形式を守って丁寧に仕上げましょう。失敗しても書き直せば大丈夫ですし、家族のサポートがあれば心強いものです。ぜひ落ち着いて準備を進め、前向きに次のステージへ踏み出してください。