年末のご挨拶として定着しているお歳暮。でも「喪中のときに贈ってもいいの?」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。実は、喪中でもお歳暮を贈ること自体はマナー違反ではありません。ただし、相手の心情や時期、表書きの言葉選びには注意が必要です。
この記事では、喪中にお歳暮を贈る際の基本的なマナーや、相手との関係別に気をつけたいポイントをわかりやすくご紹介。初めての方でも安心して対応できるよう、丁寧に解説しています。大切な人へ、感謝の気持ちがきちんと伝わる贈り方を学びましょう。
喪中にお歳暮を贈るべきか?
自分が喪中の場合のお歳暮のルール
自分自身が喪中の場合でも、お歳暮を贈ることは一般的にマナー違反とはされていません。お歳暮は“お祝い”ではなく、“一年間の感謝を伝える季節のご挨拶”という意味合いが強いためです。したがって、喪中だからといって一律に控える必要はないのです。
ただし、贈る際にはいくつかの配慮が求められます。たとえば、以下のような点に注意しましょう。
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華美なパッケージやラッピングは避け、落ち着いたデザインを選ぶ
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熨斗(のし)は紅白の水引ではなく、「無地のし」または略式の短冊のしを使用する
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挨拶状やメッセージカードには「お祝い」「お慶び」といった言葉は使わず、感謝やお見舞いの言葉を用いる
喪中とはいえ、相手との関係性を考慮しつつ、失礼のないように感謝の気持ちを静かに伝えることが大切です。
相手が喪中の場合の配慮とマナー
相手が喪中の場合には、より慎重な判断が求められます。特に「忌中(四十九日までの期間)」にあたる場合は、精神的に落ち着かないことも多く、贈り物がかえって負担になることもあります。
この場合は、忌明けを待ってから寒中見舞いとして贈るのも一つの選択肢です。どうしても年内に贈りたい事情がある場合は、以下のような配慮が望ましいです。
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表書きを「御歳暮」ではなく「御伺」「御挨拶」とする
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のし紙は控えめなデザインまたは省略する
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華やかすぎる品物(高級ワイン、華やかな花束など)は避ける
また、香典返しのタイミングと重なってしまうと、相手が混乱する恐れもあるため、贈る時期の調整も重要なポイントです。状況によっては、一言添えるか、事前に確認を取ることで、より丁寧な対応になります。
お歳暮を送ることができるのはどんな人?
お歳暮は、本来「日頃お世話になっている方に感謝を伝える」ためのものです。したがって、以下のような人が贈る相手として一般的です。
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両親や親戚などの親族
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職場の上司や先輩
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お客様や取引先などのビジネスパートナー
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習い事の先生や医師、弁護士など専門職の支援者
一方で、あまり交流がない相手や、一度きりのお付き合いで終わっている相手に贈るのは、かえって不自然に思われることもあります。
また、喪中の相手に対しては、「贈らなければ失礼」と焦る必要はありません。相手が悲しみに暮れている最中に形式的に贈るよりも、気持ちが落ち着いた頃に心を込めたご挨拶をするほうが、結果的に好印象となることも多いのです。
このように、喪中におけるお歳暮の取り扱いは、マナーの基本を理解したうえで「相手の心情に寄り添うこと」が最大のポイントとなります。
お歳暮の選び方
ギフト選びの基本と人気商品
お歳暮のギフト選びで大切なのは、相手の家族構成やライフスタイル、好みをきちんと考慮することです。一方的な贈り物ではなく、「相手の負担にならないか」「本当に喜んでもらえるか」といった視点を持つことで、気遣いのある贈答になります。
たとえば、大家族ならボリュームのある食品セット、一人暮らしの方なら日持ちする個包装のお菓子などが喜ばれます。高齢の方や健康志向の方には、塩分控えめの出汁やオーガニック調味料などもおすすめです。
特に人気の高い定番商品には以下のようなものがあります。
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高級ハム・ソーセージ詰め合わせ:ボリューム感と特別感があり、食卓が華やぐ一品
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鍋セットや出汁・調味料の詰め合わせ:冬の季節感があり、家族で楽しめる
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高級スイーツや老舗和菓子:上品で誰にでも好まれやすい
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コーヒー・お茶セット:嗜好品として毎日楽しめる実用性の高いギフト
基本的には「消え物(食品や飲料など、消費すればなくなるもの)」が好まれます。これは、相手に“物が残って負担になる”ことを避けるためで、年末年始に家族で楽しめるという季節感のある贈り物としても適しています。
お歳暮に適した品物とは?
喪中の方に贈るお歳暮では、品物の選び方により一層の気配りが必要です。特に、「お祝いごと」や「派手さ」を連想させるものは避け、控えめで落ち着いた印象のある品を選ぶようにしましょう。
以下のようなアイテムは、喪中の相手にも失礼にならず、受け取りやすいギフトとされています。
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無地の包装紙やシンプルなのしで包まれたギフト:見た目からも気遣いが伝わる
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精進料理にも使える出汁・乾物・調味料セット:実用性が高く、縁起を損なわない
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老舗の上品な和菓子詰め合わせ:控えめな甘さで贈りやすく、格式もある
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高級タオルやお茶セットなど、実用品系ギフト:食品に限らず、使ってなくなるものもおすすめ
また、包装や表書きも大切な要素です。紅白の水引は避け、無地またはグレー系の落ち着いた色味の包装紙や短冊のしにするなど、細部に配慮することで誠意が伝わります。
送ってはいけない品物のポイント
喪中のお相手に贈る際、マナーを逸すると、かえって失礼になる可能性があるため、以下のような品物はできるだけ避けるようにしましょう。
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赤・金・ピンクを基調とした華やかな包装やリボン:祝い事を連想させるためNG
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洋酒・ワイン・シャンパンなど祝い酒に分類されるもの:年末の雰囲気と合っていても喪中の方には不適切
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お花でも派手なアレンジメントや紅白カラーの花束:祝いの印象を与えるため控えたほうがよい
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肉や魚など、宗教上の戒律で禁忌とされている食材:仏教・神道・キリスト教など宗派によって異なるが、無難な選択を優先すべき
また、高額すぎる贈り物も注意が必要です。お返しを考えて気を遣わせてしまうため、5,000円〜7,000円前後を目安にするとよいでしょう。
喪中の方へ贈るお歳暮は、「気遣い」と「控えめな心配り」が最も大切です。形よりも、相手に寄り添う気持ちを第一に考えて品物を選びましょう。
お歳暮のマナーと注意点
のし紙や表書きの書き方
お歳暮は本来、年末の感謝を伝えるための贈り物として「御歳暮」という表書きを使いますが、喪中の時期には特別な配慮が必要です。特に、相手が忌中(四十九日以内)の場合は、「御歳暮」の表書きを避けるのがマナーとされています。
その代替として、以下のような控えめで落ち着いた表現を使用することが一般的です。
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御伺(おうかがい):お歳暮代わりとして、年末に贈るときに使える表書き
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寒中御伺:年明け(1月7日以降)〜立春(2月上旬)までに贈る際に適した表現
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御挨拶:どの時期でも使いやすく、気遣いが伝わる万能表現
さらに、のし紙の選び方にも注意しましょう。
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水引は使用せず「無地のし」または短冊のしを選ぶ
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派手なデザインののし紙や「紅白」の水引は避ける
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印刷ではなく、可能であれば筆ペンなどで丁寧に表書きを記す
表書きひとつでも、贈る側の心遣いが伝わるもの。相手の状況に合わせた慎重な選択が、信頼と安心感につながります。
配送や包装の注意事項
年末は配送業者も繁忙期に入り、配達の遅延や不在配達が起こりやすくなります。特に喪中の相手に贈る際は、配達のタイミングや受け取り状況に十分配慮することが重要です。
【配送前に確認しておきたいポイント】
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到着予定日を事前に確認し、相手に連絡を入れるのがベスト
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12月10日〜20日ごろまでの間に届くよう手配(早すぎると浮きやすく、遅すぎると年越しに影響)
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冷蔵・冷凍品の場合は、受取可能なタイミングを確認する
包装については、贈り物の第一印象を左右する大切なポイントです。
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派手なリボンや飾り、祝いのシールはNG
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落ち着いた色味(グレー・白・淡い茶色など)の包装紙を選ぶ
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必要に応じて、簡素な包装+挨拶状のみでも可
「贈る」より「気遣う」ことを優先した包装・配送が、喪中のお歳暮では何よりも大切です。
お歳暮に関する礼状の文例
贈り物だけでは伝わりにくい気持ちを補うのが「礼状(挨拶状)」です。特に喪中の場合、言葉選びひとつで印象が大きく変わるため、慎重に表現することが求められます。
【一般的な文例(自分も相手も喪中でない場合)】
拝啓 年の瀬も押し迫ってまいりました。
本年も何かとお世話になり、心より感謝申し上げます。
ささやかではございますが、感謝の気持ちを込めてお歳暮の品をお届けいたします。
ご笑納いただければ幸いです。
来年も変わらぬご厚誼のほど、よろしくお願い申し上げます。
敬具
【喪中の相手に贈る際の文例(配慮を込めて)】
拝啓 寒さもひとしお身にしみる頃となりました。
このたびはご服喪中とのこと、謹んでお悔やみ申し上げます。
本年も変わらぬご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。
ご家族のご心情をお察しし、心ばかりの品をお届けいたします。
ご無理のない範囲でご笑納いただければ幸いです。
敬具
礼状は印刷でも構いませんが、手書きで一筆添えると、より気持ちが伝わりやすくなります。形式にとらわれすぎず、「相手を思いやる」言葉を選ぶことが最も大切です。
以上のような細やかなマナーや注意点を押さえることで、喪中の時期でも安心してお歳暮を贈ることができます。
忙しい方必見!オンラインストアでの購入法
年末の忙しい時期、「買い物に行く時間がない」「どんな品を選べばいいのかわからない」という方にとって、オンラインストアでのお歳暮手配は非常に便利な選択肢です。
スマートフォンやパソコンから24時間いつでも注文でき、相手の住所へ直送も可能。自分で包装や配送の手間をかけずに、マナーを守った贈り物を用意できるため、共働き家庭やビジネスパーソンにとって強い味方となっています。
スイーツやカタログギフトの人気
最近は、オンラインショップ限定のギフトセットも増えており、選択肢がますます充実しています。なかでも特に人気を集めているのが以下のジャンルです。
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有名店のスイーツセット
例:ホテルオークラのバウムクーヘン、ゴディバのチョコレート、京都の和菓子セットなど
高級感があり、受け取る側も嬉しいギフトです。 -
カタログギフト
自分で好きなものを選べるため、「相手の好みがわからない」という場合にも安心。
グルメ・雑貨・体験型ギフトまで幅広く取りそろえられています。 -
地域限定の名産品や特産品セット
お米、漬物、地酒、調味料など、その土地ならではの品は“個性”と“話題性”があり、印象に残ります。
応援消費・ふるさと納税的な意味合いでも好印象です。
これらは多くのオンライン百貨店やギフト専門店、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングなどでも豊富に取り扱われています。レビューや売れ筋ランキングを参考にしながら選ぶと、失敗が少なく済みます。
事前に確認しておきたい配送スケジュール
オンライン注文は便利な反面、「配送トラブル」や「到着遅延」に注意が必要です。特に年末は配送業者の繁忙期となるため、スケジュール管理が重要です。
以下のポイントを押さえておきましょう。
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12月10日〜20日の間に届くよう調整するのが理想的
これより早すぎると季節感が薄れ、遅すぎると年末のあいさつとして間に合わなくなる場合があります。 -
必ず「お届け日指定」が可能なショップを選ぶこと
特に冷蔵・冷凍品などは受け取りが難しい時間帯を避ける必要があるため、相手の都合に配慮した日時指定ができるショップを選びましょう。 -
冷蔵・冷凍ギフトの場合は、相手に受け取り可能な日を事前に確認しておくと安心
不在が続くとギフトが劣化したり、返送になってしまうことも。 -
熨斗(のし)や挨拶状の有無を確認
オンラインストアでも、熨斗紙の種類・表書きの選択肢が用意されているところが多いですが、自動ではつかない場合もあるので注意が必要です。
まとめると、オンラインストアでのお歳暮手配は、忙しい現代人にとって“時短×マナー”を両立できるスマートな方法です。手軽でありながら、丁寧さや心遣いを失わない選び方を心がけましょう。
喪中はがきの活用とその意味
喪中はがきとは、身内に不幸があったことを知らせるとともに、「年始のご挨拶を控えさせていただく」という意図を伝えるものです。一般的には11月〜12月初旬にかけて送付され、相手に対して新年の賀詞を辞退する正式な連絡手段とされています。
ここで注意したいのが、「喪中はがきを受け取ったからといって、すべての贈り物を控える必要がある」というわけではない点です。
喪中はがきはあくまで年賀状などの“お祝いを含む新年のご挨拶”を控えるという意味であり、「お歳暮」を含めた感謝の気持ちの表現までは否定されていません。
ただし、相手の心情や家族構成(高齢の親族がいる場合、精神的に疲弊している場合など)を考慮し、状況に応じて贈るかどうかを慎重に判断する必要があります。
メッセージや挨拶状の例文
お歳暮に添えるメッセージや挨拶状は、贈り物の印象を決める重要なポイントです。喪中の相手に贈る場合は特に、言葉選びに配慮し、「お祝い」や「華やかさ」を感じさせる表現は避けましょう。
【一般的な例文(控えめで感謝を伝える)】
拝啓 年の瀬もいよいよ押し迫ってまいりました。
本年も格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございました。
ささやかではございますが、感謝の気持ちを込めて、心ばかりの品をお届けいたします。
ご笑納いただけましたら幸いです。
寒さ厳しき折、どうぞご自愛くださいませ。
敬具
【喪中の相手に贈る場合の例文】
拝啓 寒さが一段と厳しくなってまいりました。
ご服喪中とのこと、心よりお悔やみ申し上げます。
本年も何かとお世話になり、ありがとうございました。
ご家族のお気持ちをお察ししつつ、感謝の気持ちを込めて、心ばかりの品をお贈りさせていただきます。
ご無理のない範囲でお受け取りいただければ幸いです。
敬具
【年明けに寒中御伺として贈る場合の文例】
寒中お見舞い申し上げます。
寒さ厳しき折、皆様いかがお過ごしでしょうか。
ご服喪中の折、失礼ながら感謝の気持ちとしてささやかな品をお届けいたします。
本年も変わらぬご厚誼のほど、よろしくお願い申し上げます。
ポイントは、「お慶び申し上げます」「ご繁栄」「ますますのご活躍を」といった祝いの表現を避け、落ち着いた語調と丁寧な言い回しを心がけることです。
志や配慮を伝えたお歳暮の心得
喪中のお歳暮は、単なる形式的な贈答ではなく、「静かな感謝と敬意を形にする機会」として捉えることが大切です。
たとえば、次のような心得が贈り手としての誠実な姿勢を示します。
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品物は華やかさより実用性を重視し、包装も落ち着いたものを選ぶ
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手紙やメッセージで、相手を気遣う言葉を必ず添える
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「御歳暮」ではなく「御挨拶」「御伺」といった表書きで配慮を示す
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相手の生活環境や心情に負担をかけないタイミングで贈る
「喪中だから贈らない」のではなく、「喪中だからこそ、感謝と心遣いを静かに伝える」。それが、大人としての洗練された贈り方です。
お歳暮とお中元の違い
タイミングと品物の違い
日本には古くから、季節の節目にお世話になった方へ贈り物をする「贈答文化」が根付いています。なかでも代表的なのが「お中元」と「お歳暮」です。どちらも感謝の気持ちを表すものですが、贈る時期や意味合い、選ばれる品物に違いがあります。
種類 | 時期 | 意味 | 主な品物の傾向 |
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お中元 | 7月上旬〜15日頃(関東)8月初旬(関西) | 半年のお礼と夏のご挨拶 | 冷たい飲料・そうめん・ゼリーなど夏向きの食品 |
お歳暮 | 12月初旬〜20日頃 | 一年間の感謝と来年もよろしくの挨拶 | ハム・お酒・鍋セット・調味料・スイーツなど冬向きの食品 |
お中元は「夏の時期のご挨拶」として、関係を継続したい相手に贈ることが多く、比較的カジュアルな贈り物とされます。一方、お歳暮は「一年間の感謝を込めた年末の贈答」であり、お中元よりも重要視されることが多いです。
なお、両方を毎年贈るのが難しい場合は、「お歳暮だけ贈る」方が丁寧な印象を与えるとされています。
また、品物についても季節性が強く反映されます。たとえば、夏場は日持ちのする冷菓や飲料、冬場は鍋用の食材や年末年始に使える高級食品などが人気です。
ビジネスシーンにおける贈り物の考え方
ビジネスの場においても、贈答は大切な“信頼構築”の手段です。特に長期的な取引先や重要な関係先に対しては、お歳暮やお中元を通じて節目ごとに感謝を伝えることで、良好な関係を築くきっかけとなります。
しかし、企業間では「贈答に関するルール」や「社内ポリシー」が設けられている場合もあるため、以下のような点に注意が必要です。
【チェックポイント】
- 贈答の可否や上限額(例:3,000円以下に限定など)を事前に確認する
- 公務員や一部の上場企業では、受け取り自体を禁止しているケースもある
- 贈るタイミングは業務繁忙期を避け、12月中旬までに届くよう調整する
- 相手が喪中である場合には、事前に担当者へ一言確認を入れると好印象
また、企業宛てに贈る場合は、個人名ではなく「会社名+ご担当者名」宛てにし、のしの表書きも「御歳暮(御中)」とするのが一般的です。
特に近年では、コンプライアンスの観点から「ギフトの透明性」や「金額・贈答履歴の記録」が重視される傾向にあります。そのため、担当者レベルで一言連絡を入れることで、不要な誤解を避けると同時に、丁寧な印象を与えることができます。
贈答文化は、単なる“形式的なやり取り”ではなく、「気持ちを形にする日本ならではの大切な慣習」です。相手や状況に応じて柔軟に対応することで、好感度と信頼を同時に築くことができるでしょう。
喪中と忌中の基礎知識
日本では、身近な人が亡くなったあとに「喪に服す」という文化がありますが、「喪中」と「忌中」は意味合いと期間が異なります。正しく理解することで、贈答やお付き合いの場面で失礼のない対応ができるようになります。
喪中とは?
喪中とは、故人を偲び、慎ましく生活を送る期間のことです。一般的には、亡くなった方との関係が近いほど長い喪中期間が設けられます。例えば、両親・配偶者・子ども・兄弟姉妹といった近親者が亡くなった場合は、命日から1年間を喪中とするのが慣習です。
この期間中は、年賀状を控える、結婚式などのお祝いごとを遠慮する、というのが一般的です。ただし、地域や宗教、家庭の考え方によって多少の違いがあるため、絶対的なルールではありません。
忌中とは?
一方、忌中は死後四十九日までの間を指すより厳粛な期間で、仏教に由来しています。四十九日は故人の魂がこの世を離れる日とされ、その日までの期間は、故人の成仏を祈りながら喪に服す特別な時間とされています。
この間は、「喪中」よりもさらに控えるべき行動が多く、以下のような慣習が重視されます。
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結婚式や祝いの席への出席を控える
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派手な服装や化粧、アクセサリーを避ける
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贈答を控える、あるいは「忌明け後に送る」などの配慮をする
故人への敬意を表す方法
喪中・忌中の期間中にできることの一つが、「静かな敬意」を示す振る舞いです。外面的な行動だけでなく、心のこもった対応や言葉遣いによって故人への尊重と遺族への思いやりが伝わります。
たとえば、以下のような行動が挙げられます。
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喪中はがきを受け取った際は、年賀状の代わりに「寒中見舞い」を送る
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贈り物や手紙に「お悔やみの気持ち」や「ご自愛ください」という一言を添える
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故人と親しい関係だった場合は、命日や四十九日を覚えておき、香典や花を届けることも丁寧
また、喪中・忌中の相手に何かを贈る際は、「お祝い」や「繁栄」を連想させる言葉や色合いを避けることがマナーです。たとえば、「赤」や「金」を使った包装紙、紅白の水引のしなどは避け、落ち着いた色調でまとめられた無地のしを選びましょう。
こうした細やかな配慮が、故人への敬意とともに、遺族への安心感と信頼にもつながります。
忌明けまでの注意事項
忌中(命日から四十九日)は、喪中期間の中でも特に厳粛な時間とされ、贈り物を含む日常的な行動にも気を配る必要があります。お歳暮などの贈答も、原則としてこの忌中期間を避けるのが望ましいとされています。
忌中に避けたいこと:
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御歳暮の表書きで贈ること
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派手なラッピングや装飾を施すこと
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祝いの言葉や「めでたい」表現を使うこと
どうしてもこの時期に贈る必要がある場合は、
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「御伺」や「御挨拶」などの控えめな表書きに変更する
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のしを省略する、あるいは無地にする
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手紙やメッセージで相手の心情に寄り添う文言を添える
といった形で、最大限の配慮を示しましょう。
一方、忌明け後であれば、お歳暮として贈ることに問題はありません。その場合でも、なるべく落ち着いた品物と表現を用い、相手の心に負担をかけないことを第一に考えましょう。
正しく理解しておけば、喪中・忌中の期間でも相手に失礼なく、思いやりをもって行動することができます。形式にとらわれすぎず、「静かな心遣い」を意識することが最良のマナーです。
贈り物のシーン別提案
贈り物は「誰に」「どんな関係で」「どんな状況で」贈るかによって、選び方やマナーが大きく変わってきます。とくに喪中というセンシティブな状況においては、形式よりも“相手への思いやり”を重視したアプローチが求められます。
家族や友人への贈り物のコツ
親しい間柄である家族や友人には、形式的になりすぎず、心のこもった贈り物が喜ばれます。ただし、喪中の時期はやはり派手さや過度な演出は避け、控えめな贅沢を意識するとよいでしょう。
【家族への贈り物】
家族には、実用性と満足感を両立した「少し贅沢な食品」がおすすめです。
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料亭監修の鍋セットやおせち料理の一品
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無添加の高級出汁セットやオリーブオイル
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地元産の銘柄米・ブランド野菜の詰め合わせ
「健康を気遣う」タイプのギフトや、家族で楽しめる内容が好印象です。
【友人への贈り物】
友人には、受け取りやすく、気軽に楽しめる「日持ちのするスイーツ」がぴったり。
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老舗和菓子の詰め合わせ(どら焼き・最中など)
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バウムクーヘンやクッキー缶
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ドリップコーヒーと焼き菓子のセット
また、喪中であることに対して明確な言及はせずとも、「落ち着いた包装」や「無地のし」で気配りを伝えることができます。
ビジネスでの喪中対応
ビジネスシーンでは、形式と配慮のバランスが求められます。取引先が喪中である場合、「贈らない」選択が最も安全とされることもありますが、相手との関係性によっては控えめに贈ることで誠意を伝えることも可能です。
対応のポイント:
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相手の企業に贈答ルールや受取制限があるか事前に確認する
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「御歳暮」の表書きを避け、「御伺」「御挨拶」などに変更する
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電話やメールで「このような時期ですが、感謝の気持ちを形にさせていただきたいのですが、ご迷惑でなければ」と一言添えることで、配慮のある印象に
また、品物は誰が受け取っても困らないような実用品や個包装の食品を選ぶと無難です。企業宛の場合は、個人名よりも部署名や「御中」宛てで贈ることがビジネスマナーとして望ましいです。
喪中時でもできるお祝い事の考え方
喪中といえども、「すべてを控えなければならない」わけではありません。たとえば、出産・進学・昇進などのポジティブな出来事が重なった場合でも、「祝う」という形ではなく、静かな応援や励ましの気持ちを伝えることは可能です。
喪中時の“お祝いに代わる贈り方”の工夫:
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「お祝い」ではなく「感謝」「応援」「御挨拶」の表書きにする
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メッセージに「ご無理のない範囲でお納めください」「ささやかではありますが、感謝の気持ちを込めて」と添える
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包装やメッセージカードは白・グレー・淡い緑など、落ち着いた色合いを選ぶ
たとえば、結婚や出産に関しても、「派手なプレゼント」ではなく、「産後の体を気遣う栄養スープ」や「写真立てとメッセージ」など、心が伝わるギフトであれば、喪中の時期でも喜ばれることが多いです。
贈り物は「物」以上に、「心」を届ける手段です。喪中の相手にも、自分自身が喪中の場合にも、静かな配慮と感謝を込めた贈り方を選ぶことで、よりあたたかな人間関係を育むことができるでしょう。
まとめ|喪中でも感謝を伝える贈り方を心がけよう
喪中にお歳暮を贈ることは必ずしもNGではありませんが、贈る相手やタイミング、表書きなどに配慮が求められます。忌中を避け、落ち着いた品物や包装を選ぶことで、相手の気持ちを大切にした贈り方ができます。大切なのは「感謝の気持ちを丁寧に伝えること」。
この記事を参考に、マナーを押さえたうえで、思いやりのあるお歳暮を贈りましょう。正しい知識を持つことで、相手にも自分にも気持ちのよい年末のご挨拶ができます。心を込めた贈り物で、良好な関係を築いていきましょう。