身内の一周忌に呼ばれたとき、「どんな服装で行けば失礼がないのか」と迷う人は多いと思います。私も初めてのときは、喪服でいいのか、それとも少し控えめな黒でいいのか分からず、慌てて調べたことがありました。
この記事では、一周忌の服装マナーを男女別にわかりやすく紹介します。フォーマルの基準や小物の選び方、子どもの服装についても触れています。家族で安心して参列できるよう、事前に確認しておきましょう。
一周忌の服装マナーの基本
一周忌は、葬儀から一年の節目にあたる法要。葬儀ほど厳粛ではないものの、「喪服に準じた控えめな黒」を選ぶのが基本マナーです。会場には僧侶・親族・知人が集まるため、明るい色や装飾の多い服は避け、落ち着いた印象を最優先にします。
喪主や親族の服装の格
主催側として参列者を迎える立場なので、略喪服〜準喪服が目安。
男性は光沢のない黒の礼服（白シャツ・黒ネクタイ・黒靴下・黒靴）、女性は黒のワンピースやアンサンブルに黒ストッキング。バッグや靴は艶控えめで金具が目立たないものを。家族葬や自宅法要でも主催側は一段格を上げると全体が引き締まります。
招かれる側（友人・知人）の服装
参列者は「地味な平服」でも可。黒・濃紺・チャコールなど無地に近い落ち着いた色のスーツ／ワンピースを選びます。喪服でも失礼ではありませんが、光沢や装飾を抑えて“目立たない”ことを意識すると安心です。
服装選びの判断軸
-
色：黒系を基調（濃紺・グレーは可）。柄は極小の無地風まで
-
素材：光沢・透け感は避ける
-
小物：靴・バッグ・ベルトは黒で統一。金具はマット調を選ぶ
-
身だしなみ：しわ・毛玉・サイズ感を点検（清潔感が最重要）
迷ったときの連絡の仕方
案内状や親族に「服装の目安」を確認するのが最短です。
「当日は略喪服でよいでしょうか」「黒のスーツに黒ネクタイで伺います」など、具体的に尋ねるとトーンを合わせやすく、当日の不安も解消できます。
じ黒で統一し、バックルが光沢の強いタイプは避けると上品にまとまります。
また、髪型やひげ、爪などの清潔感も大切です。スーツが完璧でも、寝ぐせや無精ひげがあると印象を損ねてしまいます。「見られていないようで見られている」という意識を持つと安心です。
季節や会場に合わせた工夫
夏場は薄手のスーツやシャツを選び、汗染み対策としてインナーを着用すると快適です。冬は黒や濃紺のコートを着用し、式中は脱ぐのがマナー。
室内法要では上着を脱ぐこともあるため、スーツの内側まできれいに整えておきましょう。
女性の服装マナー
女性の場合は、全体の印象が柔らかく見える分、「上品さと落ち着き」を意識することが大切です。
派手さを抑えながらも清潔感ときちんと感を両立できれば、どんな会場でも安心して参列できます。
服の色とデザイン
基本は黒無地のワンピースまたはアンサンブルスーツ（ワンピース＋ジャケット）です。
丈はひざ下〜ふくらはぎ程度が理想で、ミニ丈はもちろん、ロングすぎるものも避けます。立ち座りの多い法要では、動いたときのシルエットも意外と目立ちます。清楚で落ち着いた印象を与えるシンプルなデザインを選びましょう。
袖は季節を問わず「七分袖〜長袖」が基本。夏場でもノースリーブや半袖は避け、軽い素材で体温調整できるタイプを選ぶと快適です。肌の露出が多い服は、どうしても場の雰囲気にそぐわない印象を与えてしまいます。
また、ワンピースやスーツの素材にも注意を。光沢のあるサテンやレース、透け感の強いシフォンなどは避け、ウールやポリエステルなどマットで落ち着いた生地を選びましょう。
ストッキングは必ず黒を着用します。肌色や柄入りは避け、伝線していないか事前に確認を。替えの1足をバッグに入れておくと安心です。
「露出を控え、静かに品を添える服装」が、女性の一周忌スタイルの基本です。
アクセサリーとバッグ
アクセサリーは、一連のパールネックレスが基本。二連は「不幸が重なる」とされるため避けます。ピアスやイヤリングをつける場合も、小ぶりなパールや黒石で控えめに。金属の輝きが強いデザインはマナー違反になることもあります。
バッグと靴は黒で統一し、素材は布製または艶のない革を選びましょう。金具が目立つタイプやブランドロゴが大きく入っているものは避けるのが無難です。
靴はヒールの高さ3〜5cm程度が理想。高すぎるヒールやミュール、サンダルはカジュアルに見えるため避けます。歩きやすさと静音性を意識して、音の出にくい靴底を選ぶと好印象です。
「控えめでも美しく」を意識すると、場の雰囲気になじみながらも清潔で上品に見えます。
メイクと髪型のマナー
女性の場合、服装だけでなくメイクや髪型も印象を左右します。
メイクはナチュラルを意識し、ファンデーション・眉・リップのみでも十分です。赤やピンクの口紅は避け、ベージュ系や控えめな色味を選びましょう。ネイルも無色または淡いベージュ系に整えます。
髪型はすっきりまとめるのが基本。ロングヘアは低めの位置でまとめ、派手な髪留めは使わないようにします。黒やブラウンのシンプルなゴムやピンで整えるだけで十分です。前髪や後れ毛が顔にかかるとだらしなく見えるので、鏡で全体を確認してから出発しましょう。
子どもの服装マナー
子どもは「落ち着いた色」と「清潔感」を最優先に整えます。制服があればそれが最適。なければ黒・紺・グレーなど無地寄りのアイテムでまとめ、サイズ感が合っているか、しわや毛玉がないかを丁寧にチェックしましょう。迷ったら“制服、なければ無地＋清潔感”が基本ラインです。
基本の色・デザイン
-
色は黒・紺・チャコールグレー（柄は極小～無地が安心）
-
男の子：シャツ＋ジャケット（またはカーディガン）＋長ズボン
-
女の子：膝丈ワンピース（またはブラウス＋スカート）＋カーディガン
-
ロゴ・キャラクター・スポーツラインは避ける（目立ちやすい）
年齢別の考え方
-
乳幼児：喪服の用意は不要。着慣れた落ち着いた色の服でOK。動きやすさと温度調整を優先。
-
未就学～小学校低学年：フォーマル風セットアップや紺のスクール調が万能。セパレートなら上下を同系色でまとめて「きちんと感」を出す。
-
小学校高学年：学校制服があれば制服が最適。私服の場合はジャケット＋長ズボン／膝丈スカートで大人に寄せたコーデに。
季節・会場に合わせた調整
-
夏：半袖は避け、薄手の長袖や七分袖。冷房対策にカーディガンを携行。
-
冬：黒・紺のコートで防寒（式中は脱ぐ）。厚手インナーで着ぶくれしないよう、サイズ感を事前確認。
-
室内法要：脱いでも整うよう、インナーやカーディガンの色も落ち着かせる。
靴・靴下・ヘア
-
靴：黒・紺・濃茶のプレーンな革靴／ローファー。スニーカーは無地の黒系でシンプルなら可。光る靴・派手な配色はNG。
-
靴下：白・黒・紺。柄・フリルは控えめに。座ったときに肌が見えない丈に。
-
ヘア：前髪・後れ毛が顔にかからないようにまとめる。飾りは小さく、色は黒・紺・ブラウン系で。
乳幼児向けの配慮
-
静かに過ごせる着慣れた服を最優先。タグやチクチク素材は避ける。
-
体温調整しやすい重ね着（薄手のカーディガン・腹巻き等）で快適さを確保。
-
抱っこ紐・ブランケットは無地の落ち着いた色だと会場になじむ。
持ち物と過ごし方の工夫
-
小さなおやつ（音・匂いの少ないもの）、静かな絵本やぬりえ、ハンカチ・替え靴下を用意。
-
ぐずったときは速やかに退室できる導線を事前に確認。
-
参列前に「静かに過ごす場所」であることを簡単に共有しておくとスムーズ。
直前チェックリスト
-
しわ・毛玉・糸のほつれはないか
-
靴の汚れ・かかとのすり減りはないか
-
予備のストッキング／靴下・ハンカチは入れたか
-
防寒・暑さ対策の羽織りは用意したか
季節別の服装ポイント
一周忌は命日を目安に行うため、季節を問わず開催されます。
そのため、「季節に合わせた快適さ」と「礼儀を保つきちんと感」の両立が大切です。服の素材や重ね方を工夫することで、快適に過ごしながらもマナーを守ることができます。
夏の法要
夏は暑さとの戦いになりますが、半袖ではカジュアルな印象になりやすいため避けます。
薄手の長袖や七分袖のジャケットを選ぶのが基本です。冷房が効いた会場では、羽織りがあると体温調整にも便利です。
男性は薄手の黒スーツに通気性の良いインナーを重ね、女性は涼感素材のワンピースやアンサンブルで軽やかにまとめると快適です。
汗対策として、吸汗速乾インナーを着用すると清潔感を保てます。シャツやブラウスの脇部分にインナーがあたることで汗染みを防げるため、見た目の印象も良くなります。
靴下やストッキングは通気性のあるものを選び、「暑さ対策＝礼儀を崩さずに快適さを保つ工夫」を意識しましょう。
また、屋外での移動がある場合は日傘を使用しても構いません。ただし、派手な色やレース柄は避け、黒やグレーなど控えめなデザインを選びます。
冬の法要
冬は防寒対策をしながらも、式中のマナーを忘れないようにします。
黒や濃紺のコート・ジャケットで防寒し、マフラーや手袋も落ち着いた色で統一しましょう。
会場に入ったら、「式中は必ずコートを脱ぐ」のがマナーです。喪主側であっても同様で、室内では正装のみで臨むのが基本です。
女性は厚手のストッキングやタイツで寒さ対策を。男性はヒートテック素材の肌着を下に重ねても問題ありません。
ただし、厚手の服を重ねすぎて動きにくくなると、姿勢が崩れたりシワが寄りやすくなります。サイズ感と動きやすさのバランスを確認しておきましょう。
屋外法要や墓前での読経がある場合は、インナーの重ね着やマフラーで体温調整をし、風が強い日は帽子や手袋も検討します。
ただし、式が始まる前には必ず外しておくのが礼儀です。
春・秋の法要
春と秋は気温の変化が激しい季節。朝晩の冷え込みに備え、ジャケットやカーディガンを用意すると安心です。
春は淡い色味を避け、黒・濃紺・チャコール系でまとめます。秋はウール混のスーツやワンピースなど、やや厚みのある素材を選ぶと快適です。
「フォーマルさを保ちつつ、気温に合わせて柔軟に調整する」ことがポイントです。
季節に合わせた心配りを
どの季節でも共通するのは、「清潔感と落ち着き」。
汗やシワ、防寒具の着脱など、季節特有の動作にも気を配ることで、周囲に不快感を与えません。
まとめ｜一周忌は「控えめ・清潔・心を込めた装い」で
一周忌の服装で一番大切なのは、「派手さを避けること」ではなく、「故人と遺族に対して敬意を表す心を装いで表すこと」です。
黒を基調にした上品で落ち着いたスタイルであれば、どのような場でも安心して参列できます。服装そのものよりも、「清潔に整っているか」「場にふさわしい配慮ができているか」が見られるポイントです。
また、一周忌は家族や親族が久しぶりに集う機会でもあります。服や小物は前日までにしっかり確認し、ストッキングの替えや靴の汚れ、ジャケットのシワなどもチェックしておきましょう。小さな準備の積み重ねが、「落ち着いた振る舞い」に自然とつながります。
子どもを含め家族全員でトーンを揃えると、写真に残ったときも整った印象になります。派手ではないけれど、心のこもった身支度。
それが、一周忌という日を穏やかに迎えるための何よりのマナーです。
故人を偲ぶその時間が、「形式よりも心を大切にする日」として、家族の記憶にやさしく刻まれますように。
